【Review】第16節 vs.埼玉パナソニックワイルドナイツ
2025.05.01
後半、SH TJ・ペレナラの連続トライなどで反撃。首位・埼玉WKから勝ち点を獲得
休止週を挟んで挑んだリーグワン第16節の相手は、第3節で16-39(前半9-17)で敗れた埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)。今回は相手のホームである埼玉・熊谷スポーツ文化公園ラグビー場に乗り込み、首位チームからの勝利を目指した。
前節に復帰を果たしたアイザック・ルーカスがFB、非凡な才能の片鱗を示してきた伊藤耕太郎が初めてSOに入るなど新たな布陣で挑んだ一戦は、BR東京が自陣からのアタックやPKからの速攻、ピンチでの堅い守りを見せて奮戦。トライ数はどちらも3つと互角の戦いを演じ、最終盤まで3点差で食らいついたがわずかに届かず。21-27(前半7-17)で、トップリーグ時代の2018年10月以来の勝利を逃した。
先にチャンスを掴んだのは風下の陣地から攻めたBR東京。WTBセミシ・トゥポウのパスカットからゴール前までボールを運びアタック。ここはディフェンスに阻まれボールを失う(前半6分)。その後は埼玉WKのターンとなり自陣へ。PKでゴール前ラインアウトを与えると、モールを巧みにコントロールされ2番にトライを許す(16分)。再開後も攻め込まれ、ゴール前で必死に守ってトライは阻んだが、PGを決められ0-10(21分)。
しかし、直後のリスタートキックを確保しハーフウェイ付近からアタック。FBアイザック・ルーカスからパスを受けたSO伊藤が、正対するディフェンスの内側にステップを切ってブレイク。カバーに回ったディフェンス数人も振り切り、ポスト直下へトライ。WTBメイン平がCVを成功させ7-10とする(23分)。27分にCTB PJ・ラトゥにイエローカードが出たが、BR東京はモメンタムをつくり続け、再びSO伊藤がゲインラインを切り外にパスを出したがわずかに合わず。
このあと規律の乱れから自陣に入られ、ラインアウトからフェーズを重ねながら逆サイドまで運ばれ、右隅に2つめのトライを許し7-17(33分)。BR東京は35分にPGを狙うも不成功。41分にもPKを得てゴール前に攻め込み、WTBトゥポウが左コーナーにグラウンディングしたが、ラインを踏んでいたとしてノートライとなり試合を折り返す。
後半もBR東京が先に好機を迎え、SHペレナラがトライラインに迫るが獲りきれず(後半2分)。するとディフェンスでの反則でゴール前ラインアウトを与え、モールからラック、そこから展開され、中央に22番がトライ。7-24と点差が開く(10分)。
しかしここからBR東京がファイトバックする。18分、25分にどちらもラインアウトモールを起点とし、SHペレナラが後方から持ち出すかたちで2トライを挙げ、WTBメインも確実にCVを成功させ21-24と点差を詰める。
僅差で迎えたラスト15分は、自陣でディフェンスする場面が大半を占めたが、埼玉WKの猛攻を何度も弾き返しチャンスを探った。しかし、アタックの場面をつくれないまま時間が過ぎ、ゴール前スクラムで反則を犯す。PGを決められたところでノーサイド。21-27で勝利を逃すかたちとなった。しかし、7点差以内の敗戦で獲得できるボーナスポイント1を確保。埼玉WKからの勝ち点は、勝利を挙げた2018年以来となる。
総勝ち点は28となり、順位は8位をキープ。プレーオフの最後の1席を争う6位・東京サントリーサンゴリアス(東京SG)との勝ち点差は8となっている。残り試合は2。
「パナとやるのは好きなんです。楽しいんですよ」
ボールを持って22mラインを越えたケースは、BR東京、埼玉WKともに8回。そのうちスコアに成功したのはBR東京が3回、埼玉WKが5回。チャンスをスコアに変えた回数の差が勝敗を分けた。だが、第3節の前回対戦時に共有されていた「ゴール前への侵入を9回以内に」というテーマは、今回についてはクリアしていたことになる。ボールを保持して攻め、キックで相手にボールを渡す場面もやや抑えた。相手のチャンスの総数を少なくしたことが、接戦に持ち込めた理由の1つかもしれない。
「パナソニックさんは、ゲームスピードとかアンストラクチャーのところなどで高いスタンダードを見せてきたチーム。クイックスローやターンオーバーボールのクオリティはリーグでも一番だと思うが、特に最初の20分はそこを抑えられた」
タンバイ・マットソンヘッドコーチはアンストラクチャーの局面を意識していたと語る。スコアに至った5度のケースのうち、ターンオーバーが起点になっていたのは、ラインアウトスティールから攻め込まれた前半21分のPGのみ。埼玉WKは堅守速攻が持ち味と評されることが多いが、思うような速攻は許さずに戦えていた。
「相手はシンプルなプレーをしてくるんですけど、それに対して僕らもしっかりシンプルに対抗する。“歯には歯を”みたいな。今週はそういうところにフォーカスしていたんで、正々堂々というか、真っ向勝負ができたところはよかったことかなと思っています」
こちらの土俵に相手を引き込み、思いきって勝負を仕掛けられたことへの手応えを語ったのはFL松橋周平。そしてにこやかに述べる。
「パナとやるのは好きなんです。楽しいんですよ」
プレッシャーがのしかかるシーズン最終盤。その状況にあって「ラグビーが楽しい」という言葉が聞こえてくるところに、今のBR東京の強さはある。
同日に実施されたトレーニングマッチも激戦に。メンバー入り目指す選手たちが躍動
この日の午前中、両チームのノンメンバーによるトレーニングマッチが実施された。ともにメンバーに選ばれてもおかしくない選手、またケガからの復帰を間近に控えた選手が多く出場し、激しく、高いモチベーションを感じさせる好ゲームとなった。
BR東京はゲームキャプテンを務めたSO堀米航平が、SH南昂伸とともにアタックをオーガナイズする。前半3分、敵陣でのキックチャージからチャンスをつくると、ルーキーの岸佑融らのキャリーでプレッシャーをかけ、復帰を目指すNO8木原音弥がトライ。13分にはスクラムからの攻撃でCTBロトアヘアアマナキ大洋がブレイク。敵陣深くに入ると、WTB高本とむが大外を破ってトライ。
19分には再びスクラムから攻め右サイドをえぐり大きく展開。左サイドでWTBネタニ・ヴァカヤリアにトライが生まれ、21-0とリードを広げた。埼玉WKの接点へのプレッシャーは激しいものがあったが、先発したルーキーのLO岸佑融らが奮闘。ボールを失うことなくアタックを継続するシーンが続いた。その後は3つのトライを返されたが、21-19で試合を折り返す。
練習生を含めメンバーを大きく入れ替えながらの戦いとなった後半は、PR大山祥平、谷口祐一郎、WTBシオペ・タヴォ、NO8サミュエラ・ワカヴァカ、WTB古賀由教ら復帰を目指す選手たちが登場。ルーキー・HO李淳弘もピッチに立った。
5分に激しいディフェンスで許したターンオーバーから、27分にスクラムから持ち出したNO8のキャリーから、2つのトライを許し21-33と逆転されたが、終了直前の39分に反撃。自陣で反則を奪うとすぐさまリスタート。フル出場のSO堀米がキックパスを放ち、これがWTBタヴォに入る。内側をフォローした練習生が素晴らしいランを見せゴール前までゲイン。このチャンスでフェーズを重ねしっかりトライを獲りきり、28-33としたところでノーサイド。
「前半の途中まではよかったが、そのあと、自陣からの脱出が難しくなった。(コンタクトは)引いてしまう場面もあったが、いけるところはいけた」(LO岸佑融)
「圧倒的なプレーを見せたいと思って試合に臨んだ」(SO堀米航平)
わずかに届かなかったものの激しいファイトを見せ、午後にキックオフを控えた選手たちを鼓舞するゲームとなった。
次節第17節は大一番。5月3日(土・祝)13:00から、東京・味の素スタジアムでの6位を争う東京SGとの直接対決に挑む。第2節で20年ぶりとなる劇的勝利を挙げた相手に対し、もう一度結果を残し、プレーオフ進出に望みを繋ぐための一戦となる。前回対戦では欠場していた主軸選手も復帰しており、敵地でのゲームとなる。環境は大きく異なるが、BR東京も試合を重ねながら着実に成長してきた。チームの一体感は序盤戦とは別次元といっていい。
「ある意味、もうプレーオフみたいな感覚で戦うことになるのかなと」(FL松橋周平)
塊となり、もう一度勝利をつかみにいく姿を見届けたい。
監督・選手コメント
タンバイ・マットソンヘッドコーチ(HC)
チームのことは誇りに思います。1週間いい準備をして熊谷にやってきました。ワイルドナイツ(埼玉WK)とのゲームは、多分リーグワンの中でも一番のチャレンジと言えるようなもの。その戦いに挑む準備についてはすごく誇りに思います。チームには常に勝負しにいってほしいと伝えていて、それをしっかりやってくれたと思います。少し失礼な感じに聞こえてしまうかもしれませんが、そういうつもりではありません。ボーナスポイント1点という結果は、残念に思っています。チャンスはつくれたんですけど、活かしきれなかった。いいチーム相手にはそれでは足りないということですね。
SH TJ・ペレナラゲームキャプテン
僕もアグリーです。チームのことをすごく誇りに思います。タフなチームが相手で、リーグでもベストチームと言われるような、そういう権利を得てきたチームだったので。20年ぐらいかな? トップレベルを走ってきたチームで、すごい安定しているチームだと思うんですけど。(それでも)自分たちが勝てなかったことは残念に思ってます。すごくファイトして、勝つチャンスもつくれたと思います。本当に大事なところで獲りきれなくて、取りこぼしてしまったのが少し影響しているかなと思います。でも自分たちのチームを誇りに思う気持ちは消えません。パナソニック(埼玉WK)もキープレイヤーがいないなかでいいパフォーマンスをしていたと思います。
質疑応答
—いい準備ができたとのことだが、どんなところにフォーカスして準備をしたか
マットソンHC:パナソニックさんは、ゲームスピードとかアンストラクチャーのところなどで高いスタンダードを見せてきたチームだと思います。クイックスローやターンオーバーボールのクオリティはリーグでも一番だと思うのですが、特に最初の20分はそこを抑えられたと思います。トレーニングはちょっとグチャグチャのアンストラクチャーに対応して高いレベルでプレーするための準備をしてきました。
—攻め込まれたところで効果的なターンオーバーを3つか4つぐらいした。そこもフォーカスしていたか
マットソンHC:リアクションですね。ターンオーバーに対するリアクションはチームとしてもすごくフォーカスしてる部分です。
—伊藤耕太郎がSOとして先発。それに至った経緯を
マットソンHC:ここ何週間か選ばれるか選ばれないかっていうところにいました。10番はそれぞれタイプが違います。(伊藤)耕太郎は初めての10番での先発でしたが、パーフェクトゲームだったかなと思います。相手はあまり耕太郎のことを知らないと思いますし、アタックで違う絵を見せたかった。今日はそれを見せてくれたと思います。違ったスキルセットとか、加速力とか。もちろん9番にTJ(・ペレナラ)がいて、外にCTB池田(悠希)がいるとプレーしやすいとは思うんですけど。スタートから起用しようかどうかはずっと考えていた部分です。
—今日の相手だからというのもあったか
マットソンHC:ラストブロックのスタートですよね。そこで彼をスタートで使おうっていうところにコミットして、今後のためにゲームタイムを、というのが関係しています。もしクォーターファイナルに進んだり、(SO中楠)一期に何かあった場合、ちゃんとスタートを経験していることは大事かなと。
—ディフェンス崩す準備、ブレイクダウンでの準備で意識していたことは
マットソンHC:ハーフタイムの時にもブレイクダウンの話はしました。TJ(・ペレナラ)も少しラックで難しさを感じていたので、後半はそれに対してアジャストしました。本当に相手はブレイクダウンのなかですごくいい仕事をしてきましたね。ぐちゃぐちゃにしてくるチーム。
—チャンスで決め切るには、チームとしてどんなことが必要か
SHペレナラ:とにかくもっとベターにやるしかない。セミシ(WTBトゥポウ)の足がちょっと出ちゃったシーンありましたね(前半42分)。あの場面は僕の(一つ前の)ミルキー(FBルーカス)へのパスが後ろにずれてしまった。それがその次のパスのスピードにも影響して、足が出てしまったことにも影響した。そういう小さいことが積み重なって、スコアできるかできないかっていうところに繋がるんで。僕がパスをしっかり決めていれば。すごく大きなミスっていうわけじゃなくて、ちょっとしたずれでターンオーバーになってしまう。そういったちょっとしたことですね。
マットソンHC:パナソニックさんはラインアウトディフェンスがよかったです。NO8(ジャック・)コーネルセン選手にいいパフォーマンスをされました。
—プレーオフに進出できる枠がトップ4からトップ6に。それはどれくらいモチベーションに影響しているか
SHペレナラ:僕はどの試合でも勝ちたいですし、モチベーションは高く保っています。プレシーズンゲームでも、地元でプレーする試合でも。シンプルに勝つのが好きだから。ただ、グループとしては自分たちの立ち位置は理解しています。しっかり勝てばクォーターファイナルに出場するチャンスがある。昨年は入替戦でしたが、今年はクォーターファイナルに進めるかもしれない。プレーオフに進出できれば何が起きてもおかしくない。その日、いいチームが次に進めるものなので。自分たちとしては次の2週間がどれだけ大事かはわかっていますし、すごくエキサイティングな気持ちです。今までそういう試合を戦うチャンスを得られなかったメンバーに、それをつくってあげられるかもしれない。
マットソンHC:うちのクラブは6位以上の結果を残したことがなく、プレーオフゲームの経験もありません。だからすごくエキサイティングなことだと思います。
FL 松橋周平
最低限の1ポイントが取れてよかったかなとは思いますけど、勝ちにきていたので。1週間を通して、チームとしてすごくいい方向に進んでいたなと思っていますが、こういうチームに対して最後勝ちきるところには課題がある。
—2度目の対戦だった
明らかに前回僕らがやったときより、僕たち自体が成長してる風には感じているんで。今日の試合にはそれがすごく表れたかなと思います。自分たちのやりたいことをしっかりできたという感じがあります。相手はシンプルなプレーをしてくるんですけど、それに対して僕らもしっかりシンプルに対抗する。「歯には歯を」みたいな。今週はそういうところにフォーカスしていたんで、正々堂々というか、真っ向勝負ができたところはよかったことかなと思っています。
—ボールを持って攻めれば、チャンスを生み出せるという自信を感じる。仕留めきれれば
やっぱり仕留めないといけないなとは思います。そこでどういう絵を全員が描いているかにはまだ課題がある。勝っても負けても常に課題があるので、今日の試合も踏まえて、もっとよくしなきゃいけないなっていうのは感じています。
—自分たちからボールを動かしアタックしていくというのがベースにあった
前半は風下というのもあってそれがうまくハマっていたので、風上に回った後半もしっかりボールをキープしてアタックしていったら、チャンスが生まれていたかなと思います。
—ディフェンスについては
すごく我慢していたかなって思っていて、もっとやれる部分はいっぱいあるんですけど、だいぶ相手は嫌がってたんじゃないかなって。ミスもだいぶさせていたし。
—振り回されるような時間があまりなかった
ほぼなかったと思う。埼玉WKの試合を観ていると、やりたいラグビーをやって相手を振り回しているようなシーンがよくあるんですけど、今日の僕たちはかなりプレッシャーをかけられたかなと。激しさと冷静さを両方出せた試合だと思う。
—ここからは本当に大事な2試合になる
みんなわかっているんで、何をしなきゃいけないかって。来週はもっとギアを上げていかないといけない。相手は当然僕らに勝ちにくる。ある意味、もうプレーオフみたいな感覚で戦うことになるのかなと。
—先発出場だったが
やっぱり楽しかったですね。最後バテましたけど、出し切ったから。自分なりにはしっかりやれたんで。ただ7番としては80分で出ないといけないので、自分の責任を果たしたいなと思います。
—2018年にパナソニックに勝利したときのメンバーとしては唯一の出場(※この日メンバー入りしていたSH高橋敏也も2018年は出場)
1人でしたね。パナとやるのは好きなんです。楽しいんですよ。
※トップリーグ2018-2019 リーグ戦 第6節 パナソニックワイルドナイツ vs. リコーブラックラムズ
FL 山本秀
今季はリザーブに選んでいただくこと多かったんですけど、出場機会はなくて自分自身、試合に出たいのに出られないっていうやるせない気持ちが強かったです。時間は短かったんですけど試合に出られたっていうのは大きな一歩かなって思います。
—すごい場面(後半37分)からの出場だった
ベンチではしっかりフィジカルに、やるべきことだけやってこいって送り出してもらっていました。自分的にもそこだけしっかりやろうという気持ちでグラウンドに入りました。(緊張は?)あまりしないんです。
—コンタクトは
スクラムが結構長かったんですけど、スクラムからNO8(ジャック・)コーネルセン選手が抜けてきたところ(サイドアタックをSO伊藤耕太郎とダブルタックルで阻止)。それ以外はスクラムでした。シンビンが出たあとは、もう1回スクラムになったら今度はしっかりいこう、次の仕事をしっかりやろうっていう話をしました。
—今季、意識してきたことは
オーストラリア留学に行かせてもらって、改めてフィジカル面の大切さに気づかされました。コーチやスタッフからも「秀はちょっとスリムだ」と言われていたので。S&Cのコーチや栄養士さんと話して取り組んで、オーストラリアから帰ってきてから多分10キロ以上体重は増えたと思います。そこはちょっと自分の意識的にも変わったし、フィジカル面でも変わった点かなと思います。
—10キロ増えればタックルしていても止まると実感するのでは。入団からだと何キロくらい増えたことに
そうですね。僕、体重の変動が激しくて、夏に体重が減るんです。増えて落ちて、増えて落ちてしているので、だから入団からでも10キロくらいですかね。
試合ハイライト
■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=422
文:秋山 健一郎
写真:川本 聖哉