【Review】第9節 vs. 浦安D-Rocks
2026.02.25
セットプレーにさらなる安定感。“盤石の後半”を再現し、5勝4敗でターン
NTTジャパンラグビー リーグワンは折り返しの第9節へ。前節通算成績を4勝4敗の五分に戻し6位に浮上したリコーブラックラムズ東京(BR東京)は、暫定8位(3勝5敗)の浦安D-Rocks(浦安DR)をホームの駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場に迎えた。
試合の入りを制し2トライを先取するも、前半のうちにリードを吐き出す前節と似た展開となったが、動ずることなく、後半に4トライを連取して突き放し41-19(前半12-14)で快勝。3トライ差の勝利によるボーナスポイントも獲得した。通算成績は5勝4敗となり総勝ち点は23。順位はプレーオフ圏内の6位をキープ。7位の静岡ブルーレヴズ(静岡BR)との勝ち点差は7、5位の東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)との勝ち点差は2となっている。
第6節の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦(相模原DB)から2戦を空けWTBメイン平が復帰。しかし、ここまでフル出場を続けていたバイスキャプテンのCTB池田悠希、ラインアウトを引っ張るLO山本嶺二郎という2人のハードワーカーがアクシデントに見舞われ欠場。BR東京はCTBラメカ・ポイヒピとLO岸佑融という新戦力をメンバーに入れてこの日のゲームに挑んだ。
前節、浦安DRの元豪代表WTBイズラエル・フォラウがハイボールキャッチからのトライを見せており、その対策は1つのポイントになると思われた。タンバイ・マットソンヘッドコーチに話を向けると「(ハイボールキャッチ率は)95%だよ!」と目を丸くし、一方で、競り合いで対抗するだけではなく、キックを蹴る選手に地道にプレッシャーをかけていくエフォートも大事だと語った。
「個人的には世界最高レベルにチャレンジしようという思いでした。でもチームとしては捕られたとしても、しっかり戻ってキャッチをトライに繋げられないようにと」(フォラウと対面のWTB西川大輔)
ハイボールバトルはカギではあるが、それだけで試合が決まるわけではない。そんな冷静さがチームにはあった。
BR東京は2つの反則で浦安DR陣の22m内に入ると前半8分、外への展開でこのチャンスで獲りきり先制。さらに14分には、浦安DR陣中盤で辛抱強くフェーズを重ね、WTBメインが裏にキック。好調・FLマクカランブロディの鋭いチェイスで反則を奪うと、ラインアウトモールで2つめのトライを奪った。
しかし自陣での反則で与えたラインアウトモールと、敵陣浅めでフェーズを重ねようとする中でのエラーからのターンオーバートライで逆転を許す。BR東京は最初の2度のチャンスを確実にスコアにしたが、その後は22m内に入り続けたもののミスや反則が続き、12-14とリードを許したまま後半へ。
後半も早々に得た敵陣深くでのチャンスを逃したが、5分にHO大西将史の敵陣でのスティールからの速攻でFBアイザック・ルーカスがトライを獲り逆転。9分にも、相手が蹴ったハイパント処理からアタックに転じ、WTBメインが鋭いランで中央を突破しトライ。ターンオーバーからの2つのトライで、24-14とリードを拡げた。
浦安DRはインパクトプレーヤーによるディフェンス突破などでBR東京は脅威を与えられたが、ラインアウトディフェンスやスクラムの安定感を活かしスコアを阻む。21分、BR東京は中央付近のディフェンスの背後を狙いSO中楠一期がショートパント。これを後方から走ったFBルーカスが直接キャッチし、右に展開しWTBメインがトライ。鮮やかな連携でさらに引き離し31-14。
26分にSH TJ・ペレナラにイエローカードが出て14人となったが、FWの奮闘、SHを兼ねたSO中楠によるコントロールもうまくいき、反撃の芽を潰していく。35分にPG、36分にスピードを見せたNO8サミュエラ・ワカヴァカの突破とFLリアム・ギルのサポート、“師弟”連携でトライが生まれ41-14。最終盤はHO李淳弘、LO岸佑融、CTB秋濱悠太の2025年に入団した若手3人が出場する布陣で戦い、1トライを許したものの3トライ差を守って勝利した。
プレーヤーオブザマッチにはこの日が誕生日で、セットプレーの安定への寄与はもちろん、3つのトライに直接絡む働きを見せたHO大西が選出された。
「プレッシャーを感じていたというよりは、自分たちに期待する気持ちも大きかった」(FBルーカス)
駒沢でのホストゲームでは最多となる8,650人という観衆の前で、80分にわたりエナジーを感じさせるラグビーを披露した。ただ終始張り詰めていたというよりは、どこかラグビーをエンジョイするかのようなムードもあった。
「シーズンの中でもポイントとなる、ビッグテスト、ビッグゲームと考えていました。ただ、プレッシャーを感じていたというよりは、自分たちに期待する気持ちも大きかった」(FBルーカス)
プレーオフ争いのライバルともいえる相手とのマストウィンの一戦。それに対するプレッシャーよりも、自分たちへの期待が上回った。それがピッチに漂っていたある種の瑞々しさの正体か。
見せていたラグビーは堅実なものだった。
「ラインアウトを獲得しそこ(レッドゾーン=22m内)にしっかり長く残るというのはフォーカスしていた部分。(略)しっかりとレッドゾーンにステイしてポイントを獲る能力は成長しつつあると思います」(マットソンHC)
ラインアウトは15回中14回成功。前半の入りはボールを動かしたが、あまり後方のラインを使わずにシンプルに攻めた。エラーも最小限に留め、敵陣でフェーズを重ね続けることができていた。2つめのモールトライの前段には前進しながら18フェーズを重ねる長いアタックがあったが、チームにとって理想的なかたちだったに違いない。
後半には3つのターンオーバートライがあった。HO大西のスティールからのもの(5分)。相手が蹴ったハイボールを確保して切り返しWTBメインが仕留めたもの(9分)。FLギルのスティールからのもの(36分)の3つだ。今季のBR東京は、ターンオーバーからトライを獲りきったケースはほぼなかったが、それが前節から出現しはじめている。そこからは、リアクションへの意識や選手間の連携の高まりがうかがえた。トライを生み出すかたちは、試合を追うごとに増えている。
「一貫性」を支える中堅世代たちの奮闘
今節も新人3人がピッチに立ち、若いタレントの躍動に注目が集まることが多いBR東京だが、一方で中堅世代も充実を見せている。HO大西将史、PR西和磨、FLマクカランブロディといった30、31歳世代が確かな経験に基づくプレーを見せている。CTB池田悠希、FL松橋周平という同世代の日本人のリーダー陣がピッチにいない状況で、彼らがチームにもたらしたものは小さくなかっただろう。
第5節の神戸S戦で大敗し、巻き返しを図った第6節の相模原DB戦でもリードを奪われる苦しい展開となる中、LO山本嶺二郎のゴール前キックチャージから攻め、PR西和磨がディフェンスをねじ伏せるようにして奪った逆転トライがあった。振り返れば、ターニングポイントだったようにも思える場面だ。そのときのことを聞けた。
「自分は『アンパイな(確実な)キャリー』をしがちなんですけど(笑)、あそこはラインが見えたんでガメつくいった感じですね」(PR西和磨)
安定したプレーで役割を果たし一貫性をもたらしている中堅世代の選手たちが、ここぞという場面でチームのために一歩を踏み出し、ビッグプレーをやり遂げる。その力があるということをここ数試合、改めて目にしてきた。前節のFLマクカランブロディ、今節のHO大西将史といった面々がプレーヤーオブザマッチに選ばれていることは、絶対に偶然ではない。
「コンシステンシー(一貫性)は試合に勝つためにも、このリーグを勝ち抜き、プレーオフのような舞台でいい戦いをするためにも、必要なものだと思います。小さなことを何度も何度もしっかり繰り返せているのを僕は本当に誇りに思っていて、正しい方向に向かっていると感じています」(SHペレナラ)
一歩ずつ、80分間を「自分たちのラグビー」で占める割合は高まっている。それを支えている選手たちの奮闘にも注目していきたい。
次節第10節は2月28日(土)12:00にキックオフ。鹿児島・白波スタジアムで5位の東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)と対戦する(ビジターゲーム)。リーグワンが始まってからは5度の対戦で未勝利。しかし、昨季は1点差(44-45)、一昨季(33-40)は7点差とそのシーズンにチャンピオンとなったBL東京に肉薄してきた。現在は3連敗中だが、それだけにフィジカルへのこだわりという自分たちの強固なカルチャーに立ち返り挑んでくるのは間違いない。桜島を望むスタジアムでの後半戦初戦は、BR東京が次の景色をとらえるためのビッグゲームとなる。
「グリマーマッチデー」として開催。試合終了後には特別表彰も
この試合はトムス株式会社の協賛による「グリマーマッチデー」として開催した。試合終了後には、トムス株式会社より特別表彰を実施。「キラッと光ったで賞」には、アタックではリンクプレーで、ディフェンスではアグレッシブなタックルで魅せたFLマクカランが選ばれた。
監督・選手コメント
タンバイ・マットソンヘッドコーチ
今日は本当に満足しています。たくさんの人が駒沢に来てくださって、まさにホームゲームでした。その上で結果もよかったので、すごく嬉しく思います。ファーストゲームをプレーしたメンバーもいました。LO岸(佑融)とCTBラメカ(・ポイヒピ)ですね。彼らのプレーを観ることができたのも素晴らしかったですね。
ハーフタイムの時点ではゲームは対等な感じで。ちょっとビハインドでした。でも、ハーフタイムにプランをクリアにできたので、今まで通りのいい後半を見せるために強く戦うことに集中し、逆転できました。私たちにとって、すごく大事な結果です。トップ6を維持しボーナスポイントも獲れた。そして来週は連覇しているチャンピオンと戦えるので。すごくいいブロックを過ごせていると思います。聞こえなかった人もいるかもしれないのでもう一度言っておきましょうか。すごくハッピーです。
SH TJ・ペレナラキャプテン
浦安D-Rocksという強い相手に対し、今日はたくさんいいプレーができました。今シーズン、彼らはすごくよいチームになっていて、プレッシャーもかけています。
彼らがこの試合をターゲットにしてくるであろうというのはわかっていました。やっぱりトップ6を争っていく上で勝利が必要なゲームですので。そういういい相手に対し、自分たちもいいパフォーマンスを見せられたことはすごく誇りに思います。
戦術的にもいいゲームができました。重ねた準備、ハーフタイムのコーチからコメントを通じたアジャストもよかったので、そういうゲームができたのかなと思います。
一番誇りに思ってるのは、パフォーマンスをちゃんと繋げることがうまくなってきていることです。コンシステンシー(一貫性)は試合に勝つためにも、このリーグを勝ち抜き、プレーオフのような舞台でいい戦いをするためにも、必要なものだと思います。小さなことを何度も何度もしっかり繰り返せているのを僕は本当に誇りに思っていて、正しい方向に向かっていると感じています。
質疑応答
——後半、レッドゾーンに入ってスコアできるようになっていた。
マットソンHC:本当にレッドゾーンでの時間はすごく大事なものです。そんなに何回も入れるわけでもありません。チームとしてはここ3週間、FWパックがすごく安定感を見せてくれていて、ラインアウトを獲得しそこにしっかり長く残るというのはフォーカスしていた部分でした。いつもいつもそれができているわけではないですが、しっかりとレッドゾーンにステイしてポイントを獲る能力は成長しつつあると思います。
——PRパディー・ライアンがすごく効いている。一時は、もしかしたら引退するんじゃないかという話が出ていたとは思えない。
マットソンHC:スポーツメディシンっていう部分でもよくなってきているし、トレーナーによるサポートのレベルも高くなっていて、プレーを続けるために必要なトレーニングへの理解も深まっているのはありますよね。ただキーポイントはやっぱり本人のプレーを続けたいという情熱。その上にハードワークがある。彼は最初から並外れた存在だったわけではなく、すごいハードワークをしてきたから今がある。私が過去にコーチとして接した選手の中でも、似たタイプはブラッド・ソーン(リーグ、ユニオンの両方でNZ代表として活躍したレジェンド)ぐらいかな。30代後半でもあれほどのプレーをしていたのは。パディーがプレーする光景は美しいし、素晴らしいです。
——今日のレフリングにストレスを感じることはなかったのではないか
TJ・ペレナラ:全くストレスはなかったです。イエローカードはもらいましたけど、それで僕らの関係性の何かが悪くなるっていうこともなく、あれはディベートする余地もないというか。ゲームに対し僕はとにかくもっとベターにっていうマインドセットで臨むし、負けず嫌いで競争心がすごくあって勝ちたいと思っています。正しく見られていないかなって思うと、ちょっと負けてしまって(抑えきれず)正しくない反応を見せてしまうときもある。そこは自分でもレビューを重ねる部分です。レフェリーも人間ですからミスはあるし、僕と違う視点を持っていることもある。でも、それでOKなんです。
キャプテンとして、レフリーと本当にコミュニケーションをかわすべき大事なポイントはしっかりと伝えています。試合前に会話する機会があれば、そこでディスカッションすることもある。それで、そうしたこと以外は気にしすぎないようにする。そこにフォーカスすることで、良くはなってきたかなと思います。
マットソンHC:滑川(剛人)さんはベストレフリーの1人だと思います。ブレイクダウンをしっかりと見てくれるレフリーで、それはラグビーにとっていいことだと思います。今日もコールが難しい場面がたくさんあったと思うんですけど、イエローカードとかTMOとか。でも、すごくうまく対応してくれたかなと思いました。
——反則が減っている
マットソンHC:そんなに多くはないですが、話はしています。ブレイクダウンやセットピースのようなペナルティを犯しがちなところや、オフサイドのようなシンプルなことですね。そこは結構ディシプリンを保ってくれていています。FWパックがすごくいいパフォーマンスを見せてくれているので、そのおかげでなかなかペナルティが取られないのはあると思います。ブレイクダウンはレフリーの方がレフェリングしやすいように、「クリアなピクチャーを見せよう」というところには毎週フォーカスしてます。
ただちょっと問題があって、ペナルティは一番少ないんですけど、イエローカードは一番多いチームなので、そこはこれからのフォーカスになるかなと思ってます。
——キャプテンとしてのレフリーとのコミュニケーションは反則減に影響を与えているか
TJ・ペレナラ:それはわからないですね、考えたことがありません。そこは関係ないというか、キャプテンとレフリーの関係性は、レフリーが試合をどのようにレフリングするかとは関係ないはずなので、ゲームで起きていること(に対するレフリーの見方が)、誰かとの関係性だったり関わり方で変わってはいけない。
ただ、会話の仕方が下手だと僕がペナルティを受ける可能性はある。それは理解できるんですけど、ゲーム自体はキャプテンとレフリーの関係性と関係なく、同じようにレフリングされてほしいなと思いますけど、それで大丈夫でしょうか。
試合ハイライト
■公式ファンクラブ『RAMOVE』限定コンテンツとして、西和磨選手、岸佑融選手、秋濱悠太選手、西川大輔選手、アイザック・ルーカス選手のインタビューを公開しています。マイページよりログインいただきご覧ください。
■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=441
文:秋山 健一郎
写真:川本 聖哉