【Review】第10節 vs. 東芝ブレイブルーパス東京
2026.03.05
チームを救うセットプレーの安定。BL東京からのリーグワンでの初勝利で5位へ
今季2戦2勝と相性のよい九州でのゲームとなったNTTジャパンラグビー リーグワン第11節。鹿児島・白波スタジアムでの昨季王者・東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)との戦いは要所で激しくプレッシャーをかけあう緊迫したものに。結果は、FWでの優位と80分間集中力を保ったディフェンスで、主導権を握る時間をほぼ相手に与えずに戦ったBR東京が、33-14(前半16-7)で制した。
BL東京からの勝利はリーグワン創設後は初。過去にチャンピオンとなったチームからの勝利も初となる。通算成績は6勝4敗、総勝ち点は27となり、順位は1つ上がり5位に。なお、この試合でWTBメイン平の公式戦及びトップリーグ時代のプレーオフトーナメントを合計したクラブキャップが50に。記念すべきゲームとなった。
LOマイケル・アラダイス、FL松橋周平、CTB栗原由太などリザーブに復帰組を加えた布陣で臨んだ一戦は波乱の幕開けとなった。前半3分、入りから激しく攻めてきたBL東京を自陣22m付近で受け止めるディフェンスでFLリアム・ギルが負傷。FL松橋が早々にピッチに入ることとなる。
ワイドに展開しチャンスをつくろうとするBL東京に対し、前に出るディフェンスでこれを阻み、エラーや反則からチャンスをうかがうBR東京という図式で試合が進む。前半13分、ほぼ中央の位置のスクラムから攻めたBR東京は一度ボールを失ったが、蹴り込まれたキックからカウンターを仕掛ける。LO山本秀の突破と、突破を予知していたかのようなSH TJ・ペレナラのサポートから、FL松橋がトライを獲り切り先制。
直後、PKで再び敵陣に攻め込んだBR東京だったが、フェーズを重ねながらも落球やスティールでボールを失う場面が続く。逆にPKで自陣に入られると、ラインアウトからの展開への対応でディフェンスが乱れる。中央でブレイクを許し、HO橋本大吾の好走でトライを返され同点に。
BL東京陣浅め付近の攻防で互いにボールが手につかずにいたが前半27分、BR東京はスクラムで反則を奪うと、SO中楠一期がPGを決め10-7。その後もBL東京のアタックを自陣浅めからハーフウェイ付近で受け止める展開となったが、我慢強くディフェンスし落球を誘い、スクラムで反則を奪って押し返す流れが連なっていく。
前半38分、敵陣ゴール前ラインアウトから攻める。堅いディフェンスに阻まれたがゴール正面でBL東京に反則が出てPGで3点を追加。再開後、ハーフウェイ付近の密集で危険なプレーがありBL東京にイエローカード。ここでもPGを決め(42分)、16-7で試合を折り返す。
後半4分、この日唯一のスクラムで与えたペナルティから前進され、ラインアウトモールで失点し16-14と2点差に迫られる。その後は後半だけで12個に及んだBL東京の反則を使って繰り返し敵陣に入りチャンスをつくっていくが、BL東京もゴール前では我慢しトライは阻み続ける。
後半23分、約20分にわたる均衡を崩したのはFW。スクラムで反則を奪ってゴール前ラインアウトとし、モール、スクラム、タップからのキャリーなどで、さらに反則が重なる中攻めたてる。そしてドミネートしたスクラムの後方から斜めに走ったSHペレナラが右隅にトライ。CVも決まり23-14と点差を拡げた。
ラスト15分も運動量は落ちず、BR東京はハーフウェイ付近での安定したディフェンスをベースに、チャンスをうかがうかたちを継続する。後半32分にPGで加点。さらにホーン後、ボーナスポイントを目指しややバランスを欠いた状態でアタックを継続したBL東京の一瞬の隙を突き、WTB西川大輔がインターセプト。トライを奪って試合を締めた。
プレーヤーオブザマッチには6本のプレースキックを成功させたSO中楠が今季3度目の選出。16点を積み上げたことで総得点は121となり、得点ランキングトップに浮上した。
「やらなければいけないことはまだまだある。そこがこのクラブのエキサイティングなところ」(マットソンHC)
「今日はかなり、相手からその意思を感じました。フィジカルにいこうという意思を。そこに対しては正直ちょっと“食らった感”はあります。でも、それはわかっていたことでもあるし、その上でしっかり対応できた部分もあるので、よかったかなと」(FL松橋)
終わってみれば一度もリードを許さずに試合を終え、ポゼッション、テリトリー、セットプレー、規律といった要素はどれも明確に相手を上回った。ただ、試合の随所でBL東京が見せたプレーの断片には脅威があった。フィジカリティという原点に立ち返りつくりだしていたプレッシャーが、BR東京が思い通りのプレーをすることを阻んでいたのは事実だ。チームは昨季王者からの勝利を称え合いながらも、それを直視している。
「これまでの試合に比べるとそんなにプリティーな(きれいな)ゲームではなかったかなという感覚はあります」(SHペレナラ)
「(フェーズアタックが)ミスで終わったり、ブレイクダウンにプレッシャーかけられて終わったりしてるので。そこのディテールを高いレベルに持っていけると、もっと自分たちのラグビーができるようになってくるので。まだ全然上げられると思います」(FL松橋)
「『まだまだできるよね』という話をしています」(CTBラメカ・ポイヒピ)
反省点を挙げる選手たちの表情や言葉に明るさがあるのが興味深いところだ。これについては、タンバイ・マットソンヘッドコーチの言葉が解釈を助けてくれる。
「やらなければいけないことはまだまだあるのですが、そこがこのクラブのエキサイティングなところなのかなとも思っています」
自分たちの力を全て発揮できたとき、いったいどんなラグビーができるのか。どこまで上っていけるのか。未来の自分たちへの期待が、チームをドライブしているようにも見える。
ただでは負けないタフで粘り強いチームから、勝ちながら成長していけるチームへ。ブレイクスルーの瞬間は、間違いなく近づいている。
「チームの環境にバリューを加えたいんです」(CTBポイヒピ)
試合翌日の3月1日(日)には、東京・東芝府中グラウンドで練習試合が実施された。互いに若手選手や戦列復帰を目指す選手などが多く参加し、こちらもフィジカルで高いモチベーションを感じさせる一戦となった。
BR東京は敵陣に入り激しく攻めるもトライを獲りきることができず、追いかける展開に。終盤に意地を見せ点差を詰めてみせたが、惜しくも28-36で敗れた。プレーヤーズプレーヤー(選手たちが選ぶ殊勲選手)には24歳のFL山村勝悟が選出。
「自分の持ち味はやっぱりフィジカリティのところなので。相手に当たり負けない。タックルで絶対に止める。1対1の場面で負けない。そういうことを意識していたのですが、そこはできたかなと思います。(略)(木原)音弥さんや(山本)秀さん、すごい人たちの背中はまだ見えているとは言えないですけど、見えてくるように、目の前のことを全力でやっていきたい」
フル出場を果たし、白いジャージを誰よりも汚していた山村。ひたむきな姿勢で好アピールを見せた。
シーズン後半はいつだって総力戦になる。準備を怠らず、牙を研ぎ続けた選手たちの力が最終成績に影響を与えることはやはりある。昨季もトータルのプレータイムは決して長くないリザーブメンバーが中心となって仕掛けたラスト数分のアタックで奪ったトライがチームに勝ち点をもたらし、それが結果的にプレーオフへの望みを繋ぎ留めたケースがあった。
鹿児島で、大きなケガからの復帰2戦目をプレーし終えたCTBラメカ・ポイヒピは、ラグビーができる喜びを伝えながらこんな思いを口にする。
「シーズンスタートからみんながやってくれていることに、何かをプラスしていければと思いながらやっています。チームの環境にバリューを加えたいんです」
きっと、選手の誰もがそんな思いでトレーニングに励んでいることだろう。そうしたエフォート、それによってもたらされた価値の総量が、ここからの戦いを左右するはずだ。
次節第11節は、1週間の休止週を挟み、3月14日(土)13:00キックオフの静岡ブルーレヴズ(静岡BR/7位)を迎えてのホストゲーム。東京都世田谷区の駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場における今季最終戦となる。静岡BRとは対戦成績では現在4連敗中だが、4試合の点差の平均は6.3点と接戦が続く。
現在5位のBR東京は、プレーオフ圏内を目指すチームの明確なターゲットと言える。BR東京を倒し勝ち点を奪うことはプレーオフ戦線に残る上で大きな意味を持つだけに、静岡BRが並々ならぬモチベーションで挑んでくるのは間違いない。ピッチ、そしてスタンドから、スタジアムを相手に負けない勝利への執念で満たし、勝利を掴みたい。
監督・選手コメント
タンバイ・マットソンヘッドコーチ
ご存じかとは思いますが、東芝(BL東京)さんからの、久しぶりの勝利を挙げることができました。自分たちにとって大事なブロックだったんですけど、その最後を締めくくるこの勝利を楽しみたいと思います。今季の目標はトップ6ですが、トップ6に残れるか、もしくはそこから落ちてしまうのかは、このブロックの結果がすごく大事だとわかっていました。そんなブロックの4週目に鹿児島へ来て勝利を掴めたことは、自分たちにとって素晴らしい結果でした。本当にチームのエフォートを誇りに思います。今、トレーニングはすごく高いレベルでできています。シニアリーダーがよく引っ張ってくれていて、ラグビーを楽しむ気持ちや目的意識も持ってやれています。その上で、こうやって勝ちで締めくくれたのは本当によかったです。
SH TJ・ペレナラキャプテン
この結果をすごく嬉しく思います。皆さんからどう見えたかわからないですが、これまでの試合に比べるとそんなにプリティーな(きれいな)ゲームではなかったかなという感覚はあります。疲れもすごく感じました。スクラムもたくさんありましたし、キックを蹴り合う場面も少しあって。
ただ、連覇中のチャンピオンに勝てたことは、当然ながら自分たちにとっては軽いことではありません。彼らが2年連続でチャンピオンになっているのは、勝ち方を知っている選手がいるからだと思います。ただ少しの間、彼らは苦しんできていたので、この試合を修正の機会としてとらえ、これまで以上に気持ちを入れてくるだろうと覚悟していました。チャンピオンになったときのフィジカリティなどをもう一度見せようとしてくるはずだと。それに対しチームがよいパフォーマンスをできたのはすごくよかったです。チームやファミリー、ファンの方々に誇りに思ってもらえるようなゲームができたんじゃないかなと思います。
質疑応答
——勝ち切れた要因は
マットソンHC:すごくうちのフォワードパックがいい仕事をしていて、スクラムがあったら多分安定するだろうなっていう自信はあります。相手にプレッシャーかける可能性もあるし、ペナルティをもらえるんじゃないかと。ラインアウトも毎週よくなっていますし、身体が大きくて重めの選手もしっかりとラインに戻ったり、回り込んだりというところで頑張ってくれています。
TJが言うように、きれいなゲームではなかったんですけどね。TJの強みのひとつとして、ゲームのテンポを変えられることがあります。必要なところでスローダウンさせたり、スピードアップさせたりすることができる。BL東京のようなチームは速い展開を求めていたと思うのですが、今日の後半は、そのようにさせていませんでした。
TJ・ペレナラ:よく言ってもらいましたけど(笑)、少し疲れがあったっていうのも一つの理由かもしれません。彼(マットソンHC)が言った通り、フォワードパックがやっぱり今すごくよくて、まあこうやってきれいにいかないゲームでも勝てるチャンスをつくってくれる。私たちのスクラムは多くの場面でドミネートしていて、それ以外でも対等に組めていました。そうなるとゲームは扱いやすいものになる。
あとはディフェンスですね。2回だけやられてしまったシーンがあって、それが相手の得点に繋がったんですけど。ピッチの幅を活かして戦う、高いスキルを持った選手がいるチームに対し、本当にいいディフェンスができたと思います。
——SO中楠一期のキックが安定し自信が感じられた。一方でFWもよく、トライを狙いにいけそうな状況もあった。リーダーとして判断時に考えていたことがあれば
TJ・ペレナラ:前半にショットするか、コーナーに蹴るかを考えた場面はありました。でも、キッカーが自信を持って蹴ると言ってくれたときは、それでいきたい。後半になると、やっぱりできるだけ時間を進めたかった。得点も狙いますが、判断までに少し時間をかけることも考える。リーダーとしては、まず話し合うこと。許される範囲で時間を使って、正しい判断をすること。そこを大事にしながら進めています。
——このブロックはラインアウトが安定した。前のブロックの終わりに改善にむけての手応えを話していたが、実際に改善した
マットソンHC:結果はフォーカスした部分について出る。僕はそう信じているので、(ラインアウトへの)フォーカスレベルを上げて、それが実際ゲームに現れるのは1、2週間後くらいだろうと思っていました。ヘッドコーチである私の仕事は、正しいタイミングで正しいことにフォーカスしていくこと。やらなければいけないことはまだまだあるのですが、そこがこのクラブのエキサイティングなところなのかなとも思っています。
——後半の最初から、新人のHO李淳弘をピッチに送った
マットソンHC:コーチとしては、ベストな予想をするっていうのもすごく大事で。チームにとって、今はこれが一番いいのだろうというのをベースに考えます。よく間違えるんですけどね。でも、彼はよくやっています。練習でもいいスローができていますし、ほかのフッカーとは違った強みを見せてくれることもある。(それは?)ベストキャリアーに今後なるんじゃないかなと思っています。PRパディー(・ライアン)が投入されるとキャリーする力がアップしますが、HO李が入っても同じようにアップして、チームの後半を支えてくれるのではないかと思っています。
試合ハイライト
■公式ファンクラブ『RAMOVE』限定コンテンツとして、李淳弘選手、松橋周平選手、ラメカ・ポイヒピ選手、トレーニングマッチ後の山村勝悟選手のインタビューを公開しています。マイページよりログインいただきご覧ください。
■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=442
文:秋山 健一郎
写真:川本 聖哉