【Review】第14節 vs.コベルコ神戸スティーラーズ

2026.04.09

神戸Sが放った“ファーストパンチ”が響き届かず。我慢強く戦った後半に進化の証

リコーブラックラムズ東京(BR東京/8勝5敗/5位)は、今週も東京・秩父宮ラグビー場でのゲームに。第5節で対戦しトライを量産され敗れたコベルコ神戸スティーラーズ(神戸S/11勝2敗/3位)との再戦は、チームとしても強い意識を持って臨むテストの一戦となった。メンバーは勝利した前節をほぼ引き継いだ。変更はCTBのみ。池田悠希に替わりラメカ・ポイヒピが先発し、リザーブにPJ・ラトゥが復帰した。

神戸Sは試合開始直後から精度の高いアタックを見せ、BR東京に脅威を与える。前半2分、10分にどちらもラインアウトモールからの展開で突破し2つのトライを挙げる。BR東京も5分、13分に相手ゴール前に入り長くフェーズを重ねたが反則で好機を逃し、対照的な試合の入りとなった。

神戸Sは24分にBR東京の隙を突いた22mドロップアウトの再獲得からアタック。一気に攻め込むと中央のギャップを抜けトライ。0-21とリードを広げる。BR東京は直後の再開のキックをチェイスし反則を誘いSH TJ・ペレナラがタップスタート。ゴールに迫ると、これに反応したFL松橋周平がピックゴーでトライを挙げる。しかし直後にハイパントを使った神戸Sに自陣侵入を許す。ゴール前ラインアウトからのアタックでトライを奪われ、7-28と引き離された。

前半の終盤はBR東京がチャンスを重ねる。31分に広く空いた右のスペースにボールを運んでゲインし、PR谷口祐一郎がゴールに迫ったがグラウンディングを阻まれる。しかしこのチャンスで粘り、34分にゴール前ラインアウトから攻めSHペレナラがトライを獲り14-28と食らいつく。だが再開後、自陣浅めからのハイパントが神戸Sに入ると、これを起点に攻め込まれる。キックパスを使った大きな展開で右隅にトライを許し14-35。

前回対戦と同じ5トライを奪われる前半となったが、BR東京は最後に集中力を見せる。SO中楠一期がPKをゴール間近まで運び、ラインアウトからのアタックではHO大西将史がキャリー、あとに続いたLO山本嶺二郎のピックゴーで獲りきって(40分)19-35で試合を折り返す。

「後半に入ってゲームプランを変えたのではなく、後半はそれ(コンテストキック)を蹴ったときにチャンスになることが増えたという感じです」(SHペレナラ)

後半はコンテストキックとその争奪への意識を高め、ボールを持ち敵陣に入っていく時間を前半以上に伸ばした。後半に神戸Sがボールを持って22m内に入ったケースは1回のみ(35分)。相手が反則を重ねる一方で規律を保ち、後半の反則を1つに留めたこともそれを支えた。試合を通し勢いを止められず、後半も5つのトライを奪われた前回対戦の轍は踏まなかった。

もちろん、多くの時間でボールを保持し敵陣深くに入りながらもスコアできなかったことは課題として残ったようにも映る。だがSHペレナラが着目していたのは、トライが獲れなかったことではなかった。

「自分たちがエクスキュート(スコア)できなかったことよりも、相手に早い時間帯に簡単にエクスキュートさせてしまったことに悔しさを感じています。力がある2チームが戦うときには、レッドゾーン(22m内)に入ることができても、ディフェンスに阻まれてスコアできないことはよくありますからね」

「相手はそこ(22m内)のゾーンでよいディフェンスをしていました。トップ4のチームですから、それは予想していたこと。(破れなかったことに)がっかりしてはいないんです。相手にプレッシャーをかけましたし、タックルも多くさせましたし、ペナルティも誘いました。それでも相手は生き残り、自分たちは1、2フェーズで獲られてしまった。そこが一番の差だったかなと」

敵陣に留まり、我慢強く攻め続けた。ダメージを与え続けた。神戸Sのディフェンスは堅くトライは奪えなかったものの、BR東京が自滅するかたちで攻撃を終えるシーンは少なかった。前回苦しめられたターンオーバーからのアタックをもらわずに戦い続けられたのも、システムとプラン、それぞれに割り振られた役割を信じ、ときに単調にも見えるほどに、同じことを繰り返したからだろう。

試合35分に後半唯一の22m侵入をトライに繋げられたのが両軍の後半唯一のスコアとなり、19-40でノーサイドを迎える。

「厳しい試合だった。厳しすぎて、胸の中に肺が存在するのかわからないぐらいだ」(神戸SのFLアーディ・サベア)

リップサービスもあるのかもしれない。だか、追い込んでいた。強者が望んだ後半ではなかった。そこには明確な進化があった。

BR東京は通算成績を8勝6敗とし、総勝ち点は36のままで5位をキープ。4位の東京サントリーサンゴリアスとの勝ち点差も2のまま。しかし6位の東芝ブレイブルーパス東京との勝ち点差は6に縮まった。7位のトヨタヴェルブリッツ、8位の三重ホンダヒートも勝ち点差7まで迫ってきており、プレーオフ争いは大混戦となっている。

試合後には、応援アンバサダーの俳優・高橋光臣さんが選ぶ「俺のベストプレーヤー」の表彰を実施。BR東京からはピンチを救うスティールを見せたFL松橋、神戸Sは後半からの出場ながら存在感を見せたLOブロディ・レタリックが選出された。

「自分たちがやってきたことをしっかりブラッシュアップするだけ」(SO中楠一期)

ゴール前のラインアウトについて、タンバイ・マットソンヘッドコーチは修正が必要と述べつつも、こう補足した。

「言っているのは高いレベルの話で、すごく小さな差についてです。わずか3%足りないだけで結果がでない。それがチャレンジ」

神戸Sにペナルティが多く出たこともあり、この日のラインアウトは19回に及んだ。キープできなかったのは3回のみ。成功率は上々の数字だった。まさにマットソンHCが言うように、高いレベルにあるものをさらに突き詰められるかが、このクラスの相手と戦うときには重要になってくるのだろう。

ゴール前のラインアウト(後半10分)については、HO大内真は心から悔しそうな表情を浮かべ述べる。

「あれは僕のメンタルですね。(神戸SのLOブロディ・)レタリック選手が、僕がセットしてから動いてきて、来るのがわかったんです。一回止めてでも違うサインにいっていれば。(自分が)ピッチに入った直後だったので少し慌ててしまったのかもしれないです。(略)前半にベンチからよく見ていたでしょうし、一歩たりとも動かなかったので。駆け引きというか読みは、やっぱりオールブラックスだなと」

堅いディフェンスに挑み続けたフェーズアタックも同様か。

「自分たちはブレイクダウンでファイトし、いいボールをハーフバックに出しプラットフォームにするところに自信を持っているのですが、今日はそこにプレッシャーをかけられ少し崩されてしまった」(マットソンHC)

フェーズアタックに推進力が生まれるかどうかは、ブレイクダウンでの攻防がカギを握る。そこに学びがあったと指揮官は振り返ったが、その差もまたわずかなものだったのではないか。ブレイクダウンでプレッシャーを受ける場面はあったものの、完全に制圧されていたわけではない。されていれば、あそこまでフェーズを重ねることはできず、テリトリーでもポゼッションでも、もっと劣勢になっていたはずだ。

SO中楠は、まずはしっかりと試合をレビューしたいと冷静に振り返りつつも、こう言う。

「自分たちがやってきたことをしっかりブラッシュアップするだけかなと。自信はあるんで」

リベンジはならなかった。だが、選手たちの自分たちを信じる力は全く揺らいでいない。

リーグワンのレギュラーシーズンは残すところ4試合。次節15節は4月17日(金)19:00より、東京・秩父宮ラグビー場で行われるナイトゲーム、三重ホンダヒート(三重H/6勝8敗/8位)戦となる(ビジター開催)。

昨年12月、第3節の佐賀での対戦では32-28(前半7-14)で競り勝っている。終了間際にゴール前で猛攻を受け止め、守りきっての今季初勝利だった。この直接対決の結果がひっくり返っていれば、現在はともに7勝7敗の五分だったことを考えると、三重Hとの差は紙一重で、あのゴール前での攻防ほどしかないといってもよいのかもしれない。

リーグワンでの対戦成績は3勝1敗とリードしているものの、ピッチでは過去が助けてくれることはない。だが、昨季は味わうことのなかった「追われる者」として戦うプレッシャーはチームを成長させてくれるはずだ。追いすがるタフな相手を倒し、プレーオフに王手をかけられるか。春の夜の秩父宮に歓喜の歌を響かせたい。

「CSTマッチデー」として開催。試合終了後には特別表彰も

この試合は株式会社コンピュータシステム研究所の協賛による「CSTマッチデー」として開催した。試合終了後には、株式会社コンピュータシステム研究所より特別表彰を実施。「CST賞」には、FL松橋が選ばれた。

監督・選手コメント

タンバイ・マットソンヘッドコーチ

ここ数週間は自分たちをトップ4と比較してきました。プレーオフにいけるチームになるためには、彼らと自分たちのレベルを比べるべきだと思っているので。今日はいい学びになったと思います。いいスタートがきれなくて、それに対し、相手はしっかり罰を与えてきました。スコアボードにも反映されてると思います。そこが一番の学びで、いいチームを相手にするときにはいいスタートをきらせてはいけない。コーチ、サポートスタッフとしては、もう少しいいスタートをきれるような方法にフォーカスしていきます。ただ後半、ボールをキープできてチャンスをしっかり掴みました。自分たちの強みも少しずつ見え始めた。それによって相手のスコアを止めることができました。その点はポジティブだったかなと思います。

SH TJ・ペレナラキャプテン

神戸(神戸S)さんは素晴らしいラグビーチームです。まずはそれを伝えたいと思います。予想通り、彼ららしくいいスタートをきってきたなと。一度動き出すと止めるのが難しいチーム。逆に自分たちはいいスタートが切れず、まさに望んでいないかたちになってしまった。でもヘッドコーチが言ったように、そこからは取り戻していったと思います。ハーフタイムで16ポイント差。あまりいいラグビーができていなかった。でも、自分たちの強みをしっかり出してプレーできればやれるというのはわかっていました。後半はプレッシャーをコントロールできたかなと。コンバート(得点)はできなかったですが、後半の戦い方はよかったのではないでしょうか。やっぱり今日は神戸さんがすごくいいプレーをしたということだと思います。トップチームを相手に、こういうスタートをきっていては勝てないということですね。

質疑応答

——敵陣に入ってからスコアする、しないというエクスキューション(実行)の部分に差があった。プレーヤーとしてどう感じているか?

TJ・ペレナラ:アグリーですね。ただ、自分たちがエクスキュートできなかったことよりも、相手に早い時間帯に簡単にエクスキュートさせてしまったことに悔しさを感じています。力がある2チームが戦うときには、レッドゾーンに入ることができても、ディフェンスに阻まれてスコアできないことはよくありますからね。こちらは前半の最初の2、3回、22mの中に入られたあと、簡単にスコアさせてしまった。そこには少しフラストレーションを感じました。あそこでのディフェンスは、自分たちが自信を持ってやってきていただけにね。逆に相手はそこのゾーンでよいディフェンスをしていました。トップ4のチームですから、それは予想していたこと。(破れなかったことに)がっかりしてはいないんです。相手にプレッシャーをかけましたし、タックルも多くさせましたし、ペナルティも誘いました。それでも相手は生き残り、自分たちは1、2フェーズで獲られてしまった。そこが一番の差だったかなと。

——いいスタートを切るためには何が必要か?

マットソンHC:いいチーム相手には、チャンスが回ってきたら決めきる力が必要。そこにはフィジカリティが関わってきます。自分たちはブレイクダウンでファイトし、いいボールをハーフバックに出しプラットフォームにするところに自信を持っているのですが、今日はそこにプレッシャーをかけられ少し崩されてしまった。あとはセットピースも部分的に改善が必要かもしれません。ラインアウトがレッドゾーンで何回か失敗してしまったので。そういうと簡単そうに聞こえてしまうかもしれませんが、言っているのは高いレベルの話で、すごく小さな差についてです。わずか3%足りないだけで結果が出ない。それがチャレンジ。クラブとしてトップ4入りを目指していますが、今日はその実現に向けて本当にたくさんのいい学びがありました。

——後半にコンテストボールが自分たちに入ることが多くなった。何かを変えたのか?

TJ・ペレナラ:正直に言うと、ああいう(後半のような)スタートを切りたかったんです。前半は僕が蹴った最初のコンテストキックがタッチを割ってしまったり(前半6分)、ほかにもいくつかのコンテストキックがバウンドして相手に入り、オフロードパスを繋げられたりしました。(空中戦を仕掛け)ボールを競りにいくプランはありました。自分たちのファーストトライ後もエッジまでいって、そこでコンテストキックじゃなくて(SO中楠)一期にパスをして、そこからロングキックを蹴ったんですよね(前半26分)。そこからスコアされてしまったあとにも少し話して、コンテストキックを蹴ろうと再確認しました。だから、後半に入ってゲームプランを変えたのではなく、後半はそれを蹴ったときにチャンスになることが増えたという感じです。後半は相手のキックオフで始まりましたが、すぐにコンテストキックして、(WTB西川大輔が)押し出して。そこからまた(ラインアウトから)違うムーブで蹴るようなかたちに繋げたりできていました。

——プレーオフを十分狙える位置にいる。昨年と比べ、どのあたりがチームとして一番成長しているか?

TJ・ペレナラ:ビリーフ(belief=信じる力)ですかね。ストラクチャーがよくなり、選手が成長して、チームとして、自分たちはプレーオフにいけるだけのチームだと信じられるようになりました。ゲームがきつくなったりタイトになったりしても、そこから勝利を掴むために頼れるものが備わっている。そういうゲームに勝ちきると、信じる力はさらに高まっていく。そこが昨年と比べたときの一番の違いだと思います。

——それは、HCがそういう方向にコントロールしていっている?

TJ・ペレナラ:100%そうだと思います。コーチたちがここまで築き上げたもの、プレーヤーたちに信じる力を落とし込んだ功績はもっと評価されるべきです。人々の賞賛はフィールド上でいいプレーを見せた選手に贈られます。それはそれだけの価値があって、称えられるべきものだとは思います。でも、コーチたちがプレシーズンや試合までの月曜日から金曜日の1週間を通じて、選手たちの間に信じる力を築かせたことについては、あまり語られません。チームに信じる力が積み上がっているのはコーチングによるものです。もちろん間違ったことをすれば厳しく言われますけどね。でも、彼らによってチームに築かれた信じる力が与えてくれた自信があるから、どんな試合にも勝てるんだというマインドで戦えているんです。それはタブス(マットソンHC)とコーチンググループの功績で、彼らは素晴らしい仕事をしていると思います。

マットソンHC:僕はアグリーしません。褒めすぎだよ。選手たちがよくプレーしてくれていますし、リーダーたちもすごくよくやってくれている。彼らはプレシーズンに自分たちで今季はもっとベターを目指そうと決めたんです。トレーニングの質だったり、準備の質だったり。土曜日も日曜日ももっと一貫性を持ってやろうというのを彼らがチョイスした。リーダーたちはそれを毎週しっかりやり遂げてくれている。言葉だけじゃなくてね。そこが大きな違いだと僕は思います。

試合ハイライト

 

■公式ファンクラブ『RAMOVE』限定コンテンツとして、選手インタビューを公開しています。マイページよりログインいただきご覧ください。

■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=456

文:秋山 健一郎

写真:川本 聖哉、ブラックラムズ東京

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